ヌスミ加工とは

今回のテーマは「ヌスミ」になりました。
物騒な世の中ですね…
いやいや、そのヌスミではございません。(分かってます)

ソリッドツールのホームページでたくさんの事例を紹介してて、
その中に「ヌスミ加工用Tスロットカッター」ってのもあって。
「ぬぬ?ヌスミ加工とは何ぞや?」って思って、『ヌスミ』とやらを調べてみることにしました。

ヌスミとは

調べてみるとヌスミ加工って色んな例があるみたい。
「〇〇部のヌスミ加工」とか「△△のためのヌスミ加工」とか…
「逃げ」って言われる加工とよく対比されるけど、逃げは広範囲の加工で、ヌスミは部分的な加工なんやって。
ヌスミは広い意味では「逃げ」のうちの一つらしい。今回はそんなヌスミについて。
(逃げ加工については、また今度取り上げてみようと思います!)

ヌスミのイメージとしては、どこか一部を「ぬきとる」って感じ。

今回は

例1 内角部におけるヌスミ
例2 はめ合い公差が不要な場所でのヌスミ
例3 穴の一部を広げるヌスミ

の3つの例を挙げてヌスミ加工に迫ってみたいと思います!

内角部におけるヌスミ

内角部におけるヌスミ加工っていうのは、刃物がピン角など部分的に削れない場合に用いられる加工のこと。
なんやって。

うぬぬ。どうゆーこっちゃ?

まず「ピン角」から。
ピン角とは?で調べると
①先がとがっている角のこと
②直角のこと。

っていう、二つの意味が出てきた… 尖ってる角と直角。意味変わってくるやん?

でもまぁ、つまるところ、丸みのない角ってことやね。ピンってしてる感じ。

で、「刃物がピン角など部分的に削れない場合」とは?尖ってる角は工具では削られへんってこと?

調べてみると、凸形のピン角は問題ないけど、凹形のピン角は加工できへんねんて。
つまり、内径部のピン角。
 ←こんな形状の、〇の部分。

エンドミルで削ってみるとする。
ここでは角っこを削るのが得意そうな、スクエアエンドミルでいってみます。
(エンドミルって、横から見たら先端が四角いのもあんねん。それがスクエアエンドミルっちゅーやつです。)

これで削ると…

 

ココのピン角はいけるけど、

 

ココの角っこのピン角は無理やねんて。

スクエアエンドミルで削っても、内っかわの角は丸まってしまうねん…
こんな風に。

なんでかって?
それは、スクエアエンドミルゆーても、上から見ると円形やから。
円形やから曲がる時「ピン角」をつくる事ができません。

  業界用語(?)でこれを「隅アール」と言います。

この隅アールをなくしたい!→ それはどうしても無理な話で(泣)
回転工具で切削する以上、Rを小さくは出来るけどピン角にはできません…

んじゃ隅アールを極力小さくしたい! → 小径のエンドミルを使いましょう!


「Rがちっちゃくなっちゃった!」 ええやん。

まぁ、確かにRは小さくなるけど…
このちっちゃいエンドミルで削り続けるのは時間かかるし効率悪いなぁ。
途中まで大径のエンドミル使って、最後のRだけ小径のエンドミルで仕上げる?
それも工程増えるやん。しかもピン角にはなってへんし。
そう、それが重要で。ちっちゃくなってもピンにはならんのよ。

はめ合いが必要な場所やったら、丸み(R)は許されへんし、そうすると工程増やしてでもRを取り除かにゃいけません。
(はめ合いについては前回の記事をご参照ください。はめ合い公差とは

うぬぬ…

そこで!「ヌスミ加工」の出番です!


このチョボっとした部分がヌスミ。
カドの部分が無くなってる → 盗まれたってイメージなんかな?

このヌスミ加工がどんな役目を果たすかと言うと…

工具の径による角のRをなかったことにできる!
はめ合いが必要な場所でも角を気にせずはめることができます。

だから加工に適した大きさの工具を使うことができる!
やるやん、ヌスミ加工!

はめ合い公差が不要な場所でのヌスミ

隅アールの他にも、ヌスミ加工を利用して、必要な部分にだけ厳しい公差をもうける、なんてことも。
例えばこんな時。

全部を厳しい公差に設定すると、加工にも検査にも時間がかかってコストアップしてしまう。

そこで、ヌスミ加工!
はめ合いに必要な部分だけ厳しい公差を設定。それ以外の部分はヌスミ加工して公差に幅をもたせる。


そうすることで加工コスト減!

さらに、はめ合い部分以外をヌスミ加工すると組み立てやすくなって作業性が向上するねんて。

めっちゃいいやん。

穴の一部を広げるヌスミ

ソリッドツールで製造している「ヌスミ加工用」の工具は、主に「Tスロットカッター」で、
穴の一部を広げるための工具なんやって。
(Tスロットカッターについてはこちらをご参照ください Tスロットカッターとは

この部分も「ヌスミ」
こちらは油圧関係のワークで、穴の一部にヌスミをつくって油の圧力を逃がすねんて。

製造業界で使われる「ヌスミ」はいいことばかりやね!

職人さんの業界では弟子が師匠の技を「ぬすむ」ってよく言うけど、それもいい意味のぬすみやね。
師匠の技を真似して、うまくいくように努力し、より良い方法を考え、工夫を繰り返す…

「学ぶ」は「教えてもらっておぼえる」っていう意味らしいけど、
ここでいう「ぬすむ」は自分自身が努力して技を取りに行くってことで、
(教えてもらわなくても)積極的に習得するってことみたい。

かあちゃんも暇をぬすんで、誰かの何かの技をぬすもうかな。
暇をぬすむ → 「忙しい中でわずかな時間を利用する」の意味。